クリエイターズスタンプの人気ランキングで上位を賑わせている「ひとえうさぎ」シリーズ。作者のNEGIさんは、2014年5月のサービス立ち上げ当初からスタンプ制作を続けている、最古参に近いクリエイターです。

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41種類(2016年5月現在)ものスタンプをこつこつ作り上げ、経験を積み重ねてきて気付いたヒットの極意とは?

クリエイターズマーケットは、大好きなイラストを発表する場

――まずは、ご自身のイラスト歴から教えていただけますか。

NEGI:絵は小さい頃から大好きで、いつもチラシの裏に「ドラゴンボール」や「幽☆遊☆白書」など、週刊少年ジャンプの漫画を模写していました。小学校2年生のときには、夏休みの自由研究で大きな悟空のイラストを制作。教室のうしろに貼り出され、担任にも褒めてもらいました。これが「絵を描くの楽しい」となったきっかけです(笑)。

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オリジナルのイラストを描き始めたのは、高校生のときです。大学に入ってからは「NEGIの部屋」というホームページを作って、いろんな一枚絵を公開していました。その頃から動物モチーフが好きでしたね。初めてスタンプにした「トトくん」は社会人になって、細々制作している中から生まれました。2006年頃です。

その後、何年かはほとんど描いていなかったんですが、LINEスタンプとの出会いが、絵の熱を再燃させるきっかけになりました。それまでは気に入ったイラストが描けても、発表の場は自分のホームページかTwitterだけ。作ったイラストを展開する場所ができたのがうれしかったんです。

「売れるものを作ってやる」というより「自分が使うためにオリジナルのスタンプを作りたい」「せっかくイラストを描くなら、作品として見せていきたい」といった気持ちが大きくて、いまも基本的にはそのスタンスは変わりません。
 

スタンプ作りは言葉から、イラストの緩急にも気を遣う

――では、実際にスタンプを作るときは、どのように作業を進めているのでしょう。

NEGI:まずはLINEで自分だけのトークグループを作っておき、思いついたアイデアをどんどん送って、日頃からストック。そこからスタンプにする言葉のネタを40個ピックアップして、イラストを付けていきます。

「トトくん」はイラストが先だったりもするんですが、「ひとえうさぎ」シリーズは特に言葉から作りますね。いろんな人にいろんなシーンで使ってもらえるよう、軽い敬語とくだけた表現をごちゃ混ぜにしたり……とはいえ、「こんなセリフが面白いな」とアイデアが浮かぶときには、イラストのシチュエーションも同時にひらめくことが多いです。

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NEGIさんの自分だけのトークグループ。セリフのアイデアをどんどん放り込むそう。

もちろん、ネタの取捨選択は絵を描きながら。40種類のスタンプが並ぶので、似たようなイラストばかりにならないよう、構図の寄り・引きといった緩急にも気を遣います
 
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寄り・引きが効果的に描かれています。「ひとえうさぎ3」より

勢いに乗って描いた絵がよいものとも限らないので、なるべくマイペースを保つことも僕にとっては大事です。テンションが上がってしまうと気持ちがふわふわして、そもそもパソコンに向かえない。だから、できるだけ気持ちを平らにしてから描き始めるようにしていますね。
 

幅広い年代に愛されるキャラクターを、見やすく、印象的に描く

――言葉からスタンプを作り始めるのは、ヒットのノウハウといえそうですね。大ブレイクした「ひとえうさぎ」シリーズには、ほかにどんなポイントがありますか?

NEGI:「ひとえうさぎ」は、人気があるスタンプをいろいろと参考にして作ったシリーズなんです。たとえばランキングの上位にきているスタンプは、白くて、丸くて、ウサギか猫かクマのシンプルなものが多いですよね。だから、ひとえうさぎもモチーフはウサギ。それから、イラストや言葉にもこだわりました。

それまでに作っていたスタンプは、文字がちょこちょこっと小さかったり、キャラの全身を入れるために絵が細かすぎたり……LINEのトーク画面では少し見づらかったかもしれません。

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新旧のスタンプを比較。左の最近の作品「ひとえうさぎ」では、より文字が大きく、全身の露出にこだわらず、キャラクターが描かれています。

そんな反省点を活かして、構図やキャラのデフォルメは見やすさを重視。表情やポーズなど、そのイラストの特徴がちゃんと際立つように意識をして描きました。大きく見やすいスタンプになった結果、自分の母親世代の方たちにも使っていただけるようになりましたね。

ヒットを狙うにはやはり、幅広い年代に愛される、使いやすいキャラクターを作るのがポイントになりそうです。「ひとえうさぎ」は“一重まぶた”という部分が女性に響いたようで、「友達の〇〇に似てる」なんて感想をいただいたりもしましたね(笑)。親近感が生まれて、話のネタにしてもらえたのがよかったなと思います。

実は「ひとえうさぎ」を出す前に「うさぎのあおりくん」というキャラクターを描いていたのですが、こちらはあまり反応がもらえなくて……。個人的には気に入っていたのですが、イラストとしてはよくある顔だし、文字もわりと小さかったので、スタンプには向いていなかったのかもしれません。

なので、インパクトが出るように焼き直したのが「ひとえうさぎ」シリーズなんです。この表情のウサギが言いそうな、短くて言い切りのセリフを選んで、絵と文字をマッチさせています。

――「ひとえうさぎ」シリーズのブレイクは、どんなところで感じますか。

NEGI:先日の「デザインフェスタ」では、いままでとまったく違うリアクションが感じられました。「ひとえうさぎ」グッズを販売していたら、学生と年配の方が半々くらいの割合で声をかけてくださって、すごくうれしかったですね。

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「デザフェス」に出品された、ひとえうさぎのグッズ。

――それでは最後に、スタンプ作りを頑張っているクリエイターの皆さんにメッセージをお願いします。

NEGI:継続はなんとやら、と言いますか……まずは続けることだなと思います。自分も40個くらいスタンプを作ってきて、手を動かすことで見えてきたものがたくさんありました。

勘のいい方はすぐに気づけるのかもしれませんが、僕の場合は少し時間がかかりましたね(笑)。ただ描いているだけではわからない“見やすさ”や“インパクト”といった部分は、やはり作って、出して、使ってくださる方々のフィードバックをもらって、感覚が身についてきたと思います。

それから、仲間の存在も励みになりますね。クリエイターズスタンプを作っている「スタラボ」というチームと仲良くさせてもらっています。みんなと一緒に頑張っているという意識が生まれ、制作のモチベーションにつながります。

メンバーのPUKUTYさんが作った「お前の事をキュンとさせるねこ」は、僕の「ひとえうさぎ」と近い時期にランキングに入ってきて、同じタイミングで世に浮上できたのもうれしかったです。

TEXT:Sakura Sugawara

プロフィール

NEGI
東京都在住の32歳。会社員/デザイナー。アバターなど、アプリに関連するさまざまな素材の制作を手がける。



NEGIさんに質問


クリエイターズマーケットのLINE公式アカウントのコメント欄に寄せられた質問の一部に、NEGIさんに回答してもらいました!(6/5追記)

Q1:「ひとえうさぎ」を描いたきっかけはありますか?

NEGI:きっかけですか。んー。今まで作ったのもそうなんですが、「これ作ろう!」というより「手を動かしてたらこうなった!」と言う方が多いです。「ひとえうさぎ」も元になった「あおりくん」もそうです。

キャラ案
左端が現在の「ひとえうさぎ」。いまの姿になるまでに試行錯誤があったそうです。

Q2:どうしたら そんなに、可愛い絵が 掛けるんですか?

NEGI:いえいえ全然ですよ(笑)。もし、かわいいと思っていただけるものになってたらうれしく思います^^ たぶんいきなり出来る人は滅多にいないと思うので、いっぱい見て、いっぱい描くことですね。あと、何事も楽しもう!って「わくわく」を感じられたらいいですね。

Q3:ひとえうさぎって、赤ちゃんですか? オムツはいてる?

NEGI:赤ちゃんかどうかはわかりませんね。どうなんだろう……。オムツ、はいてますね。たまにキャラにはかせてます(変な趣味じゃないですよ、笑)。たぶん、自分の中で子供っぽさとか遊び心とか、そういった物のシンボルなんだと思います。


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